化粧品が【しみる・しみない】の境目は何か~分子量のお話

化粧品が【しみる・しみない】の境目は何か~分子量のお話

地球上で物質を構成する原子、その原子には原子量があります。 そして原子が複数あつまった分子には、分子を構成する原子量を合算した分子量というものが存在します
例えば...水(H2O)の場合は、水素(H;原子量約1)原子が2つ+酸素(O;原子量約16)なので、合計した分子量は18
この分子量の数値が大きければ大きいほど、その「分子が大きい」といえます

化粧品の【しみる・しみない】を考える時にこの「分子量」がひとつの目安になります
皮膚のバリア機能を突破して「浸透する」には、どれくらいの「分子量」になるのか、こんな研究論文が存在します
「500ダルトンルール」で検索をかけると、
たいてい医学系の方のブログや投稿記事を目にします(化粧品業界の人はなぜか出てきません。きっと触れたくない理論だからではないでしょうか)

ステロイドやプロトピックの浸透(経皮吸収)についてわかりやすくまとめてあるのでそのまま引用すると(↓の画像のとおり)
※ダルトン(Dalton)は、分子や原子の質量の単位(炭素の同位体元素12Cの1原子の質量の12分の1と定義されています。単位の問題であって値は分子量と等しくはなるようです) それでは化粧品原料について、この500ダルトンルールを基に考えてみます

化粧品原料によく用いられる「ヒアルロン酸」の分子量は100万以上 ⇒当然、角質層のバリア機能を突破することはできません。アセチル化して小さくしても無理かと。 化粧品原料によく用いられる「コラーゲン」の分子量は(この画像の化粧品情報サイトでは)約30万 ⇒ コラーゲンを小さくしたコラーゲンペプチドでも3000~1万...
ヒアルロン酸と同様に、分子量20~30万といわれるコラーゲンもペプチド化してもほとんど浸透しないでしょう そしてこれも化粧品原料によく用いられる「ビタミンC(アスコルビン酸)」の
分子量は約176 ⇒ ビタミンC5%とか15%とかの美容液を塗るとピリピリするとよく耳にしますが、水溶性とはいえ分子量的にはバリア機能をすり抜けて浸透して刺激として感知しているがゆえのことかと (角質層の奥というかその先まで浸透してピリピリするのが果たして良いことなのか疑問ですが) 問題なのは、界面活性剤や香料なども分子量が小さいという事実
界面活性剤の議論では決まって「悪者代表」として登場する「ラウリル硫酸ナトリウム」

その分子量は約288

500ダルトンルールに照らし合わせると、
分子量が500より小さいので余裕でバリア機能を突破して皮膚に浸透しそうです。

ラウリル硫酸ナトリウムは、欧米の硬水でもバリバリ泡が立ち、洗浄力も衰えない強力な界面活性剤として世の中に登場しました。そして、その強力な脱脂力・浸透力のために肌荒れ患者が続出したともいわれています。

この皮膚への侵襲性が強すぎるラウリル硫酸ナトリウムの分子量をもっと大きくして皮膚刺激をやわらげようと、 「ポリオキシエチレン(OCH2CH2)n」をラウリル硫酸ナトリウムに「付加」したものが、ラウレス硫酸ナトリウムです。 このラウリル硫酸ナトリウムは今もシャンプーなどに普通に使われています

画像は昨年泊まったホテルのアメニティのシャンプーたち。
そこそこ立派な容器にもかかわらずラウリル硫酸ナトリウムが主たる洗浄剤というのにがっかりしました。
出張などでホテルに宿泊する際はいつもシャンプーを持参するのですが、試しにこれらのアメニティのシャンプーを使ってみたところ泡立ちは良いのですが脱脂力が強いというかギシギシ感は否めませんでした。

ラウレス硫酸ナトリウムにポリオキシエチレンを付加して分子量を大きくしたといっても288⇒400前後になっただけなので、決して油断はできないと思っています。 (アンニテンプスではラウリル硫酸ナトリウムはもちろんラウレス硫酸ナトリウムなども今後使用することは100%ありません)

◆ ◆ ◆

<浸透する・しない>は分子量だけで決まるものでもありませんが、
もし、化粧品を使っていて何か違和感を感じたり、ピリピリ感を感じたりした時は、ご自身のお肌のコンディションをチェックするとともに、その化粧品に使用されている「原料の分子量」をほんのちょっとだけ意識されてみてはでどうでしょうか。